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健康

重症化しやすい低温やけど!注意点と対処法まとめ

こたつや電気カーペットはぽかぽかとした温かさが心地よく、気づいたら寝ていたということがありませんか。しかし、注意したいのが「低温やけど」。熱湯や高温の熱源のものと違って、低温やけどはじわじわと皮膚の深部までダメージを受けていたというケースがあります。低温やけどは重症化する前に、最初の適切な処置が肝心です。そこで、冬に多くなる低温やけどについて、予防や注意点、対処法などを紹介します。

軽くみられがち!?低温やけどの症状とは

「やけど」は日常的によくあるケガといえます。一般的なやけどは、熱湯、天ぷら油、ストーブやアイロン、炎などにより、皮膚や粘膜に外傷を負うことです。この場合は、瞬間的に熱さと痛みを感じるため、すぐに冷やすなどの応急処置が取られます。しかし、「低温やけど」の場合は、必ずしも高温のものが原因で起こるわけではありません。気がついたらやけどが進行していた、という状態になりやすいので注意が必要です。44℃程度のほんのり温かく感じる程度のものでも、長い間皮膚に接触していることにより「やけど」になってしまいます。44℃といえば、私たちが入浴するよりも少し高い温度ということになります。

しかし、やや熱い温度ではありますが、この程度の温度でやけどになるのは不思議な気がしませんか。そこが、盲点なのです。その程度の温度でも、皮膚の同じ場所に長い時間接触し続けていることにより、まったく痛みを感じずにやけどが深部にまで進行してしまいます。60℃以下の体温より熱いものが原因で起こるやけどが低温やけどの定義です。低温やけどになり得る時間は、温度が1℃上がるごとに時間が半分になると言われています。つまり、44℃のものに6時間触れていると低温やけどになるところ、45℃ならその半分の時間の3時間、46℃なら1.5時間、47℃なら45分間という計算です。

低温やけどは、皮膚の深部にまで及ぶやけどになりやすい特徴があります。特に低温やけどになりやすいのは、スネ、くるぶし、かかとなどの脚です。他の部位よりも知覚が鈍いことと、血行が悪い場所だからです。血流が良ければ熱を放散できますが、そうでなければ熱がこもりやすくなるため低温やけどが起きやすい状態になってしまいます。しかも、皮膚の浅い部分に比べ深い部分では血管が少ないため、低温といえども熱が皮下脂肪組織に広がりやすくなり深いやけどになってしまうわけです。

一般的なやけどと同じように、紅斑や水ぶくれ、皮膚のただれや細胞の損傷、壊死、細菌感染などが見られます。皮膚の表面はあまり変化が見られないと軽症に見えることもあります。しかし、深部にかなりダメージを受けている場合もあり、ひどいときには手術が必要なケースもあるため軽く見てはいけません。

低温やけどの原因は?どんな人がなるの?

低温やけどの原因に挙がりやすいものは、電気カーペットや電気コタツ、電気毛布や電気アンカ、湯たんぽやカイロなどです。他にも、ファンヒーター、暖房便座、長風呂などが原因で低温やけどになったという事例もあります。たとえば、電気カーペットの上で寝てしまった場合、あまり寝返りを打たずぐっすりと眠り込んでしまえば低温やけどになる危険性があります。電気コタツは北海道では普及率が今ひとつですが、うっかり熱源の下で寝てしまわないように気をつけましょう。また、使い捨てカイロがまだ温かいからと、パジャマに貼ったり布団に貼り付けて湯たんぽ代わりに使うのも、低温やけどになりやすいものです。

このように、寒い季節に電気毛布や湯たんぽなど、就寝中に低温の熱源のものを使って皮膚に長時間接触することにより、低温やけどになる人が増えます。特になりやすいのは冷え性の女性、高齢者、新生児などです。若い女性は末端が冷えやすい人が多く、手足が冷たいとなかなか寝付けないため、温めるための暖房などで低温やけどを負ってしまいます。新生児も寝返りが打てず、熱くて泣いても何で泣いているかがわかりづらいため、気づくのが遅れがちです。高齢者は、脳疾患などで体に麻痺があったり、皮膚の感覚が鈍くなっていたりすると熱さを感じにくいものです。他にも、アルコールで泥酔していたり、疲れ切って熟睡したり、睡眠薬を使ったりしても、低温やけどになる危険性が高くなります。

低温やけどは正しい方法ですぐに冷やす!

低温やけどで肌がヒリヒリしたり皮膚の奥が痛んだりするときは、少しでも早い応急処置が肝心です。清潔な流水でとにかく冷やしましょう。衣服を無理に脱がす必要はありません。衣服の上からまず水を流しかけて冷やします。氷や保冷剤などでは長く当てていると冷え過ぎてしまい凍傷をおこすことがあるため避けてください。また、捻挫や打ち身などに使う冷却スプレーなどは、冷感を感じるだけで患部を冷やすことにはなりません。やけどの治療や応急処置には不向きです。熱冷ましシートなども同じ理由でおすすめできません。

もし、水疱ができてしまっていたら破らずに保護しておきます。万が一水疱が破れてしまった場合は、中の液体を出したあとは、膜はそのまま貼り付けておきます。20~30分の間、十分に冷やした後は、清潔なガーゼやハンカチなどで覆っておきます。その後は速やかに医療機関を受診しましょう。一般的にはやけどの初期治療の場合は皮膚科ですが、近所になければ外科や形成外科、子どもなら小児科などでも構いません。とにかく早く適切な処置を受けることが大切です。軽ければ塗り薬で経過観察することになるでしょう。重度と判断された場合には、外科的治療が必要になるケースもあります。

低温やけどを防ぐ工夫と対策を!

通常のやけどと異なり、低温やけどは長時間かけて進行していくため、早いうちに気がついたり気をつけたりしてさえいれば防げる症状です。本人や同居の家族が、どのような状態が低温やけどを引き起こすかを理解していれば、未然に防ぐことができるでしょう。また、電気毛布や電気アンカなどはタイマーを短く設定しておく、寝る前に布団を温めるだけに使い、就寝時はスイッチを切るなどの対処で安全に使うことができます。冬を迎え暖房を使い始めるときに低温やけどのことを思い出し、家族皆で留意するよう心がけましょう。万一低温やけどになってしまったときは、一刻も早く流水で冷やすという対処法を覚えておきたいですね。